Dr-Kee-pyon-chan’s diary

1日1学びと息抜き

低用量ピルは血栓症のリスクがあるのでご注意を.

Dr.けーぴょんちゃんです.

 

私のチームに,昨日夜間に30歳代女性が緊急入院されていました.

病名は「肺動脈血栓塞栓症」です.

この病気は,血液が何らかの理由で固まりやすくなり,肺に流れる血管に血栓(血の塊)が詰まってしまう病気です.

長時間フライトの後に,足に血栓(下肢静脈血栓症)ができて,それが動き出しとともに肺動脈に飛んでしまう「エコノミークラス症候群」という言葉は皆様も聞かれたことがあるかと思います.ファーストクラスに搭乗していてもそのリスクはありますが.

血液サラサラの薬(抗凝固薬)が点滴,内服ともに広く普及していますが,全世界で毎年8.5万人が死亡している,との統計もあり突然死の原因になります.

 

当該患者さんは,画像上血栓も大きくて,さらに心臓の一部が変形するくらい循環動態に影響も与えていたので,循環器内科とも相談して抗凝固薬の点滴による厳重管理としています.

血栓ができる原因は様々ですが,当該患者さんは生理痛の緩和のために内服されている「低用量ピル」を飲まれていることが最も大きな原因と考えらえれました.

 

インパクトの大きな論文でも,低用量ピルを内服していると,こうした肺動脈血栓塞栓症のリスクが3-5倍に上昇することが報告されています.

van Vlijmen EF, Veeger NJ, Middeldorp S, Hamulyák K, Prins MH, Büller HR, Meijer K. Thrombotic risk during oral contraceptive use and pregnancy in women with factor V Leiden or prothrombin mutation: a rational approach to contraception. Blood. 2011 Aug 25;118(8):2055-61; quiz 2375. doi: 10.1182/blood-2011-03-345678. Epub 2011 Jun 9. PMID: 21659542.

 

ただし,低用量ピルの内服がダメ!という訳ではなく,ピルを内服されている方におかれましては,血栓症のリスクを自己認識し,行動様式に注意していただく必要があります.

 

(個人の努力や注意で改善が期待できる因子)

・脱水状態

・長時間体位変換を行わない(飛行機移動など)

・肥満

など

(個人の努力や注意では改善が期待できない因子)

・担癌患者

ステロイド投薬中(抗炎症薬)

・家族で血栓症のリスクあり

など

 

ピル内服中に,足の浮腫みや痛み(=下肢静脈血栓症を疑う症状),胸苦しさや胸痛(=肺動脈血栓塞栓症を疑う症状)があれば早めに医療機関への受診を推奨します.

5-7日間くらいの入院でほぼ全ての患者さんが元気に退院されていきます.

 

パートナーがピル内服されている男性の方々は,旅行中にはストレッチやマッサージで血液がうっ滞しないようにしてあげたり,飲水を促してあげるとよいかもしれません.